日本シェイクスピア協会会報

Shakespeare News

VOL. XXXIX No. 1
July 1999

会員の皆さんへ
喜志 哲雄


シェイクスピア祭講演(要旨)
Women and Boys Playing Shakespeare

Juliet Dusinberre


∞ ∞ 論文集を編んで ∞ ∞

Shakespeare and the Japanese Stage の成立をめぐって
笹山 隆

Japanese Studies in Shakespeare and His Contemporaries について
川地 美子

記念論文集の刊行について
高橋 康也


∞ ∞ 教室のシェイクスピア ∞ ∞

「ことば、ことば、ことば」
上野 美子

十年一日・・・
小沢 博

もっと思想史を
佐野 隆弥

もったりしすぎず、いじりすぎず
野田 学


映画 “Shakespeare in Love” に寄せて
村上 健


文献解題:初期近代英文学とナショナリズムの問題
──「ブリテン」の位置付けを巡って

廣田 篤彦


 

会員の皆さんへ
喜志 哲雄

本年4月から二年間、日本シェイクスピア 協会会長を勤めることになりました。1997 年3月末に任期満了で委員を退いた時には、 協会の運営に関わる日がまた来るなどとは 全く思いませんでした。そんなわけで、少か らず戸惑いましたが、幸い、1991 年に東京で 開かれた国際シェイクスピア学会の準備の ためにともに苦労し、気心の知れている金子 雄司さんが、再び総務・事務局長を引受けて 下さったのを始め、揃って有能な方々が委員 をお勤め下さいますので、たとえ会長は非力 でも協会は何とか運営して行けるのではな いかと思います。会員の皆さんの御協力、御 支援を心からお願い致します。

会報「シェイクスピア・ニューズ」の編集 には私自身が当ることにしました。会員がふ え、いわゆる国際化が進んだ結果、協会の仕 事は往時とは比べものにならないほど複雑 化しており、個々の委員の負担も増大してお ります。会長も何かの実務を担当すべきだと 思いましたが、「ニューズ」は協会と個々の 会員とをつなぐ重要な刊行物ですから、会長 が名実ともに編集責任者になるのがよかろ うと考えました。しかし、私ひとりではこの 仕事はこなせません。そこで加藤行夫さんに 協力をお願いしたところ、快くお引受け頂き ました。言うまでもなく加藤さんはコンピュ ーターに精通した方で、これまでも「シェイ クスピア・スタディズ」や協会の論文集のキ ャメラ・レディ・コピーの作成を担当して来 られましたが、これからは「ニューズ」につ いて同じ仕事をして頂きます。皆さんが手に しておられるこの号の企画は加藤さんと私 とが立てましたが、版下はすべて加藤さんの 手を煩わしたものです。これによって経費が 大幅に節約できますので、「ニューズ」は学 会特集号を含めて一年に三回発行したいと 考えております。また、「ニューズ」を会員 にとって身近なものとするため、投稿を歓迎 します。「ニューズ」の内容はもとより、協 会の運営全般についても何なりと御意見を お寄せ下さい。但し長さは400 字程度に限ら せて頂きます。また、会員の方々が現在どんなことを研究しておられるか、どんなことに 興味がおありかといった問題を扱った投稿 ――「研究ノート」といったコラムになると 思いますが、そちらの投稿もふるってお寄せ 下さい。「ニューズ」には私自身も毎号寄稿 し、協会の現状をありのままに述べたり、協 会が抱えている問題について率直な意見を 開陳したりするつもりです。

もうひとつお知らせせねばならないのは、 協会の公式ホームページの開設です。これに ついても加藤さんに中心になって準備して 頂き、金子さんと安達まみさんに御協力頂き ました。この号がお手元に届く頃には既に利 用できるようになっている筈です。「ニュー ズ」のような活字の媒体にはどうしても限界 がありますが、ホームページなら頻繁に情報 を更新できますし、印刷物には盛込めないた くさんの情報を提供することもできます。ホ ームページを開設するのなら個々の会員が 意見を書込むことができるようにせよとい う御要望が当然あると思いますが、ホームペ ージの管理には厄介な問題も色々あります ので、当分の間は専ら協会の広報活動の手段 として利用させて頂きます。

加藤行夫さんが「シェイクスピア・ニュー ズ」のキャメラ・レディ・コピーを作成して 下さることは既に申しましたが、協会では主 な刊行物のすべてにデスクトップ・パブリッ シング(DTP)を導入することにしました。 今後「シェイクスピア・スタディズ」につい ては高田茂樹さん、学会資料については河合 祥一郎さんが、この仕事を担当して下さいま す。そしてやはりコンピューターの権威であ る金子雄司さんが全体を統括して下さるこ とになっています。仕事の分担を明瞭にする ため、この四人の方にはあらたに設けた「出 版担当」の委員をも兼ねて頂きます。なおDTP 導入の結果、「スタディズ」刊行経費はほぼ 200 万円が既に節約されておりますが、今後 は更に経費の削減が全体にわたって図られ ることになります。

「スタディズ」については、刊行の遅れが ずっと問題になっておりましたが、前委員の上野美子さんを始めとする方々が努力して 下さったおかげで、遅れはかなり取戻せまし た。私の会長としての任期の間に三号を発行 すると、遅れは完全に解消されます。何とか そうしたいと思います。そうなるかどうかは ひとえに会員の皆さん次第です。掲載するに 値する論文が揃いさえすれば、遅れを解消す ることは何でもないのです。

「スタディズ」刊行と並ぶ協会の重要な学 問的活動は、言うまでもなく秋の学会の開催 ですが、これについても見直しの必要がある のではないかと、私は考えております。具体 的に言うと、セミナーだけではなくて、かつ てのパネル・ディスカッションのようなもの を復活させてはどうかということです。セミ ナーとは本来は正式に登録したメンバーが 事前に他のメンバーの研究成果に目を通し、 十分な準備をした上で直接に意見を交換す る場であるべきですが、現在のセミナーの多 くは傍聴者に配慮せざるをえないかたちに なっているようです。セミナーをあるべきか たちに戻し、セミナーに登録していない会員 のためには別のプログラムを用意すべきだ というのが、私の考えです。これについては 小澤博さんを始めとする学会担当の委員の 方々に御検討をお願いしておりますが、会員 の皆さんのお考えも伺いたいと思います。

協会が初めて刊行する英文の記念論文集 は、予想外の事態のせいで未だに出版に至っ ておりませんが、おそらく今年秋の学会まで には出来上ると思われます。日本シェイクス ピア協会は、国際化という言葉がまだ流行語 になってはいなかった頃から学問の国際化 を心がけて活動して来ました。第一回の学会 が開かれた1962 年には、私はまだ大学院学 生でしたが、その頃からさまざまなかたちで この団体の仕事のお手伝いをして参りまし た。振返ってみると、私の半生は協会ととも にあったとさえ言えます。それを私は誇りに 思います。なぜなら、試行錯誤や紆余曲折は あったにせよ、協会は常にひとつの方向を目 指して進んで来たからです。英文論文集の刊 行や国際シェイクスピア学会の主催は、協会 にとっては当然の仕事であったのだと、今更 のように感じます。

この4月、私はアメリカ・シェイクスピア協会の年次大会に出席するため、サンフラン シスコへ行って来ました。発足年だけを基準 にするなら、この学会は日本シェイクスピア 協会よりも若いのですが、私が目を見張った のは、この学会がアメリカの学会として活動 を始めながらいつの間にやら国際学会に変 ってしまったことでした。アメリカやカナダ はもとより、イギリス、フランス、ドイツ、 日本、スペイン、イスラエル、韓国などの研 究者が正規の会員として出席し、研究発表を 行ったりセミナーに参加したりしているの です。学問のための組織はこうでなければな りません。私がサンフランシスコへ行ったの は、2001 年にスペインで開かれる国際シェイ クスピア学会の準備委員会がその間に開か れたからでしたが、この国際学会にも協会会 員の皆さんが積極的に参加してほしいと、私 は考えております。たまたま同じ2001 年に 協会は創立40 周年を迎えますので、恒例に 従ってしかるべき外国人学者を招聘したい と思います。「渉外」という委員をあらたに おき、楠明子さんに就任をお願いしたのは、 このことを念頭においているからです。

最後にいささか不躾なことを敢えて申し ます。それは、会員の皆さんはどうか会費を きちんと払って下さいということです。会費 の督促のために事務局員が使う時間や費用 は、もっと有意義な、もっと納得の行くこと のために使えたに違いない時間や費用なの です。更に言うなら、協会は委員や事務局員 の奉仕的な活動によって成立っております。 たとえば、東京で委員会が開かれる時、東京 周辺以外の場所に住んでいる委員には新幹 線の実費が出ますが(近頃は新幹線の回数券 を差上げることにしています)、宿泊費は出 ません。要するに、私どもはいわゆる持出し で働いているのです。これが不満だと言って いるのではありません。今や国際的にも高い 評価を受けている学会のために働くことに、 私どもは誇りと喜びとを感じております。た だ会員の皆さんには、この協会が事務局員や 委員が時間や労力を犠牲にすることによっ て成立っているのだということを、時々思い 出してほしいのです。

10 月に盛岡でお目にかかるのを楽しみに しております。


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