シェイクスピア学会

 

41回シェイクスピア学会

 

プ ロ グ ラ ム


 

 

 

20021012日(土)/13日(日)

会場:東京女子大学

(〒167-8585 東京都杉並区善福寺2丁目6番1号

 

主催:日本シェイクスピア協会


²      受付は9号館1階ロビーで開会の30分前から始めます。本年度会費未納の会員と新入会員の方は8,000円(学生会員は5,000円)をお支払いください。

 

²      1日目に委員選挙の投票を行います。投票所を9号館1階ロビーに設けます。投票受付時間は12:30より15:00です。

 

²      12日の懇親会(会費7,000)にご出席になる方、および13日昼のお弁当(800)をお求めになる方は、同封の振り込み用紙で930日までにご送金ください。ご入金を確認次第、「申し込み確認ハガキ」をお送りいたします。懇親会へはご家族、ご友人のご同伴を歓迎します。

 

²      講演は一般公開です。研究発表、セミナーへの参加は会員に限られますが、会員の紹介があれば一般の方も出席できます。

 

²      研究発表およびセミナーに参加される方へ

ハンドアウト等の資料は、あらかじめ充分な枚数をご用意ください。不足分が出ても会場校では複写することはできません。また、資料を前もって会場校へ送ることは、混乱を生じる場合がありますのでご遠慮ください。

 

日本シェイクスピア協会のホームページ

http://wwwsoc.nii.ac.jp/sh/

でも学会についての情報がご覧になれます。

 

日本シェイクスピア協会

101-0062東京都千代田区神田駿河台2-9研究社ビル501

Phone/Fax 03-3292-1050 振替口座00140-8-33142



プ ロ グ ラ ム

1012日(土)

 

13:009号館9102教室]

開会の辞       日本シェイクスピア協会会長   金子雄司

       東京女子大学文理学部英米文学科主任 土岐知子

フォーラム


テキスト ボックス: 委員選挙について

本年度は従来の郵便による投票に加え、学会会場で委員選挙の投票を受け付けることになりました。

投票受付は10月12日(土)12:30より15:00です。

9号館1階ロビー学会受付横に、委員選挙関連受付および投票所を設置します。委員選挙関連受付にて投票用紙を受け取り、受付時間内に投票を行ってください。9102教室(学会開会式会場)を、委員選挙投票用紙記入場所としてご利用ください。
委員候補者推薦会議
議長 青山誠子

本年度は学会会場で、委員選挙の投票を受け付けることになりました。

投票受付は10月12日(土)12:30より15:00です。

9号館1階ロビーに学会受付と並んで、委員選挙関連受付および投票所を設置します。委員選挙関連受付にて投票用紙を受け取り、受付時間内に投票を行ってください。学会開会式の行われる9102教室は、フォーラム終了後、委員選挙投票用紙記入場所となります。

選挙管理委員長 青山誠子
14:30
17:00 研究発表

1室[9号館9101教室]

司会:筑波大学助教授 佐野隆弥

1.『ペリクリーズ』再訪―近親相姦、売春、シンデレラストーリー

日本大学助教授 阪本久美子

2.A Game at Chessにおける王権回復の構図

岩手県立大学助教授 石橋敬太郎

 

司会:立教大学非常勤講師 村上淑郎

3.ShakespeareKeats'Negative Capability'

中央大学教授 上坪正徳

 

第2室[9号館9103教室]

司会:九州大学教授 徳見道夫

1.シェイクスピアの歴史劇における情報の信頼性

京都大学助教授 廣田篤彦

2.『ジョン王』再考

東京農工大学助教授 森祐希子

 

司会:関西学院大学教授 小澤博

3.現代のシェイクスピア研究と性格批評の行方

武庫川女子大学教授 斎藤衞

 

第3室[9号館9104教室]

司会:埼玉工業大学教授 成田篤彦

1.A Lover's Complaintにみられる"blood"の特異性

   福岡女子大学大学院博士後期課程 渡邉晶子

2."Journeys end in lovers meeting"? ―『十二夜』における相愛の幻想

姫路獨協大学助教授 竹村はるみ

 

司会:九州大学外国人教師 David Taylor

3.Shakespeare and American Fabrications of Stratford-on-Avon

Peter Rawlings

Senior Lecturer, The University of the West of England

 

第4室[9号館9105教室]

司会:東京工業大学助教授 由井哲哉

1.O'erdoing Termagant – HamletTermagantとは何者か

北里大学専任講師 和治元義博

2.Queen Mabはどこから来たのか     

名古屋大学助教授 滝川睦

 

司会:中央大学教授 金子雄司

3.分析書誌学の方法

慶応義塾大学助教授 英知明

 

 

テキスト ボックス: 18:00−20:00  懇親会
   会場:吉祥寺第一ホテル(電話0422-21-4411) 
          武蔵野市吉祥寺本町2-4-14
   会費:7,000円 

東京女子大前から吉祥寺駅行のバスに乗り「吉祥寺駅入り口」で下車、徒歩5分。P.17の地図をご参照ください。
  



10
13日(日)

10:00-12:30 特別講演[2号館2102教室]

 

司会:筑波大学教授 加藤行夫

 

1. 「成り上がり者のカラス」はシェイクスピアではなかった!

東京大学助教授 河合祥一郎

1592年、ロバート・グリーンは、『グリーン一文の知恵』(Greenes Groats-worth of Witte)にこう記した。「ここに一羽の成り上がり者のカラスがいる。われわれの羽根で美しく飾り立て、その虎の心を役者の皮で包んで、諸君の誰にも負けず見事に無韻詩(blank verse)を大仰に述べたてることができると思っている。また驚くべき何でも屋で、この国で舞台を揺り動かせる(Shake-scene)のは自分だけだと自惚れている」と。ここで揶揄されているのはシェイクスピアであることは、今では「常識」となっているが、本講演ではこれをくつがえし、「成り上がり者のカラス」の正体を明かすことに挑戦する。

 

 

2.『オイディプース王』における

 大妻女子大学教授 川島重成

オイディプースの自己発見を主題とするこの悲劇において、最初から彼の(神託の)真相を知る者がいた。盲目の預言者テイレシアースであり、オイディプース伝説に通暁している観客である(観客の目がこれほど見事にプロットの中に構造化されているドラマも少ないであろう)。さらに、オイディプースの妻イオカステーも、彼より早く発見に達する。オイディプースの真実をめぐるこの知の落差が人間存在のアイロニーと仮象性を浮き彫りにする。ソポクレースはそれを〈テュケー〉という語で表した。

〈テュケー〉とは人の目に捉えられた限りでの運命の謂であり、アポローンの存在(あるいは)の装いであった。


12:3013:30 昼休み

 

11号館(学生ホール)1階ロビーにてお弁当をお受け取りください。

 

 

 

13:301630 セミナー

 

セミナー1 [1号館9101教室]

イギリス・ルネサンスの文学と出版

コーディネーター:篠崎実(千葉大学助教授)

メンバー:井出新(フェリス女学院大学助教授) 佐藤達郎(日本女子大学助教授)

ゲスト:圓月勝博(同志社大学教授)

 

セミナー2 [9号館9102教室]

『ロミオとジュリエット』を読む

コーディネーター:石塚倫子(那須大学助教授)

メンバー:エグリントン佐藤みか(東京大学大学院博士後期課程) 小西章典(名古屋大学非常勤講師) 小町谷尚子(慶應義塾大学専任講師) 藤沢祥子(筑波大学大学院博士後期課程) 大和高行(鹿児島大学助教授)

 

セミナー3 [9号館9103教室]

ステュアート朝の仮面劇

コーディネーター:山田由美子(神戸女学院大学教授)

メンバー:太田幸典(シェイクスピア・グローブ・センター日本支部) 勝山貴之(同志社大学教授) 鳴島史之(北見工業大学助教授) 西出良郎(奈良女子大学助教授) 山田昭廣(信州大学名誉教授) 横田保恵(東京大学大学院博士後期課程)


セミナー4 [9号館9104教室]

チャールズ朝の喜劇

コーディネーター:佐々木和貴(秋田大学助教授)

MEMO

 
メンバー:末廣幹(東京都立大学助教授) 福士航(東北大学大学院博士後期課程) 南隆太(神戸市外国語大学助教授)

 

 

 

 

 



 



【資 料】

研究発表要旨

『ペリクリーズ』再訪

―近親相姦、売春、シンデレラストーリー

日本大学助教授 阪本久美子

 Bad quartoしか現存しないシェイクスピアの『ペリクリーズ』は寓話的であると言われるが、一般的な御伽噺の「イメージ」から考えると、不似合いな要素、近親相姦および売春が含まれている。近親相姦は、反社会的行動、文明社会への脅威とみなされる行為である。一方、世界で一番古い商売と呼ばれる売春も、同様に反社会的というレッテルを貼られた職業である。ロマンス劇『ペリクリーズ』の特殊性は、売春宿の客として登場した地元のVIP、ライシマカスが、マリーナの将来の夫となることである。ここには非常にロマンチックでない出会いがある。若く美しく素性も良い娘が下賤の立場に甘んじているが、やがて「王子」に見出されるという構造は、Marina WarnerおよびJohn G. Caweltiによると、西洋文学の中に名を変え、形を変えて出現している「シンデレラ・サークル」と呼ばれる物語群の特徴である。拙論では、シェイクスピア以外の筆によると言われるアンタイオカスのエピソードに見られる近親相姦のモチーフと、この救出物語の原型、そして売春という反ロマンス的要素がどのように絡み合っているか論じたい。

 

A Game at Chessにおける王権回復の構図

岩手県立大学助教授 石橋敬太郎

 一見、初演時のイングランド国王ジェイムズ一世の対スペイン外交を単純に風刺しているかに見えるこの作品には、風刺とは異なる政治的メッセージも隠されている。それを明らかにするために、この作品が、ジェイムズの支配構造を利用しながら、白国王の王権をイエズス会の絶対主義的な君主制度建設という野望と密接に関連づけて呈示していることに注目したい。つまり、王権の絶対性を説くイエズス会を抱き込む白国王は、黒騎士らの陰謀を見抜けず、王国内にイエズス会士の暗躍をゆるし、あやうくチェックメイトをかけられる。しかし、白騎士と白公爵は、このようなイエズス会を抱き込む白国王の支配構造の欠陥を払拭することで王国の危機を救う。言い換えるなら、白騎士らによる黒王国の陰謀の暴露と、その結果再生される王国の安定回復という構図の中に、弱体化しつつあったジェイムズの王権強化を図っている。そのことが、この作品の基本戦略となっているのだ。


 

ShakespeareKeats'Negative Capability'

中央大学教授 上坪正徳

Keats'Negative Capability'論は、Shakespeareのプロテウス的想像力を、詩人の自我意識と客観世界との関係から考察した一種の想像力論である。この思索の根底には、Keats独自のKing Lear体験があったと考えられる。KeatsにとってKing Learは、善悪の判断も定かではない「あわれな二本脚の動物」のあるがままの状況を描いた悲劇であった。このような人間存在そのものの直接表現を可能にするのは、優れた詩人の特質である他の存在に共感・同化し、自らも「半解の状態」(half knowledge)に耐えられる能力である。

 Keatsに典型的に見られる、詩人の立場からのShakespeare理解が、劇の構造や演劇の約束事を軽視する傾向をもっていたことは否定できない。しかし、'Negative Capability'の概念やKeatsの詩に伏在するShakespeareのエコーやイメジャリは、ロマン派の詩人がShakespeareからいかに大きな創造的影響を受けたかを端的に表わしている。

 

 

シェイクスピアの歴史劇における情報の信頼性

京都大学助教授 廣田篤彦

本発表では、リチヤード三世の身体的特徴、その中でも特に、リチャードには生まれながらにして歯が生えていたという話を取り上げ、シェイクスピアの歴史劇における情報の取り扱い方について考察したい。この話はトマス・モアによって記述されて以来、年代記には繰り返し記録されており、『へンリー六世・第三部』では、リチャード自身によって、産婆と彼が生まれたときにその場にいた女たちの言葉が繰り返されている。一方、『リチャード三世』では、ヨーク公によって幾分違った話が、リチャードの乳母から聞いたと称する話として語られる。これらを比較し、モアに既に見られる情報の正しさに対する疑いがシェイクスピアによってどのように表現されているかを考察すると、そこには、『リチャード三世』が後世に与えた影響を考える時極めて皮肉に感じられる、歴史記述の基となる情報に対する根本的な疑念を見て取ることができるように思えるのである。


 

『ジョン王』再考

              東京農工大学助教授 森祐希子

シェイクスピアの歴史劇の中で、『ジョン王』はあまり高く評価されてこなかった。作品の構成が散漫、人物造詣が弱い、主人公が不在などと批判されてきた。扱っている時代が他の作品から飛び離れて古く、しかも製作年代、典拠との関連、初演記録などがすべてにわたって確定できないために、一連の歴史劇の流れの中に決定的に位置付けることが難しいのもこの作品への評価が定まりにくい一因となっている。

しかし、一見散漫で流動的とも見える『ジョン王』には、他の歴史劇と共通する時代の政治性が流れている。本研究発表では、この作品を女性登場人物から見た親子関係と婚姻関係を軸に読みなおすことによって、この劇における王位継承権の正当性、王国間の政治的対立といった問題点の意味を焙り出すことを目指す。

 

 

現代のシェイクスピア研究と性格批評の行方

武庫川女子大学教授 斎藤衞

シェイクスピア批評の世界で、登場人物の性格を極めて重視し、それをこと細かに描き出し論評を加えるという、かつて全盛を誇った、ブラッドレーを頂点とするいわゆる性格批評は、今日、数奇とさえいえる運命にさらされている。それは一方で終わったと断定的な死亡宣告を下され、「キャラクター」という言葉さえ「ダーティー・ウヮード」であるとまで言われながら、他方で、弁護し、実践する有力な批評家もあって、依然として命脈を保っているようにも見える。折から、ハロルド・ブルームのシェイクスピア性格論、そして広くは性格論全般についての侃々諤々の一書『ブルームのシェイクスピア』(2002)が出た。こうした錯綜する現代性格批評の歴史をざっと振り返り、現状を分析し、その行方を占うのは、日本の場合を含めてシェイクスピア批評全体のあり方を考える上で意味のないことではあるまい。

 


 

A Lover's Complaintにみられる "blood" の特異性                                                                             

福岡女子大学大学院博士後期課程 渡邉晶子

長編詩Venus and AdonisThe Rape of Lucrece、そしてA Lover's Complaint は、それぞれ女性が不満を嘆く形で話が展開していく。先の二作品では、Venusの性欲がAdonis に、また、Tarquin の性欲が Lucrece に死をもたらす。Adonis Lucrece は体を鋭器で刺し、「血」を流して死ぬ。ところが、同様に性欲がテーマの一つとして扱われているA Lover's Complaintでは、誰の死も描かれていないにも関わらず、「血」という言葉の使用頻度が高い。

本発表では<生>と<死>の両方を象徴する語 "blood" に注目して、 異なった性質として現れる "blood" の形状が、A Lover's Complaintの中でいかに他の二作品とは違う効果をもたらしているかを検証する。

 

 

"Journeys end in lovers meeting"? ―『十二夜』における相愛の幻想

姫路獨協大学助教授 竹村はるみ

 「誰を口説こうと、あの方の妻になるのは私 ("Whoe'er I woo, myself would be his wife.")」(第1幕第4場)。恋するオーシーノーのためにオリヴィアに求愛する羽目に陥ったヴァイオラの傍白は、「求愛(wooing)」と「結婚(wedding)」の乖離を示唆している点において興味深い。観客はここで、ヴァイオラがこれから求愛する人物と、彼女が劇の最後で結婚する人物は別であることを認識させられる。『十二夜』は、求愛から相愛を経て結婚へ、というロマンス特有の図式をまず否定することから始まっているのである。実際この劇において、求愛は報われるはずであるという、ロマンスにつきものの相愛願望は必ずしも充足されない。本発表では、劇の材源とされるバーナビー・リッチの「アポロニウスとシラ」との比較を交えながら、ロマンス的喜劇としての『十二夜』の特異性について考察したい。

 

 


Shakespeare and American Fabrications of Stratford-on-Avon

              Peter Rawlings

Senior Lecturer, The University of the West of England

Stratford-on-Avon is at the centre of the Shakespeare industry, and the purpose of this paper is to explore the extent and nature of various nineteenth-century American involvements in its fabrication as a cultural icon. Specifically, it will be argued that disputes over the authenticity of Shakespeare's birthplace can be closely related to characteristically American varieties of scepticism over whether the historical Shakespeare that Stratford has partly helped to construct actually wrote the plays that bear his name. The main protagonists in this enquiry are American writers whose travelogues, essays, and fictions represent crucial interventions in bardolatry: Washington Irving (1783-1859), Nathaniel Hawthorne (1804-1864), Delia Bacon (1811-1859) and Henry James (1843-1916). In various ways, these writers participate in processes whereby publicizing the dubiety of the Stratford site increased rather than diminished its value. At the centre of American uses of Stratford in the nineteenth century and beyond, is the rewarding exploitation of scepticism.

 

 

O'erdoing TermagantHamletTermagantとは何者か?

北里大学専任講師 和治元義博

 『ハムレット』3幕2場冒頭でハムレットは旅回りの役者たちに演技指導をし、その中で彼は二人の人物に言及する。「ターマガント」と「ヘロデ王」である。「ヘロデ王」は中世サイクル劇に実際に登場する人物であるが、その直前に言及されている「ターマガント」とは一体何者なのであろうか?ほぼ全ての注釈書が「中世の宗教劇、道徳劇に登場するやかましいイスラムの神」といった説明をしているが、実際は「ターマガント」という神は現存する宗教劇、道徳劇には登場していないのである。

 本発表は、まずハムレットの言及する「ターマガント」がなぜ「中世劇に登場する」と言われるようになったのかその経緯をたどり、次に、「中世劇には登場しないターマガント」をどう解釈すべきかについて、劇中にみられる中世劇の隠喩、女性に対するハムレットの不信感などを中心に考察するものである。


 

Queen Mabはどこから来たのか

名古屋大学助教授 滝川睦

 本発表は、Mercutio が語る Queen Mab speech (Romeo and Juliet 1.4. 53-95)を、近代初期英国の歴史的・文化的コンテクストを映し出す三つのエピソードに焦点を合わせながら、多角的に照射する試みである。第一のエピソードは、1590年代初頭、Hampshire で"the Queen of Fairies"によって起こされた詐欺事件。第二は1451年、"servants of the queen of the fairies"が Humphrey Duke of Buckingham の狩猟園に押し入った事件。第三は、1578年、Norwich において Elizabeth Iのために考案された、壮麗な公式馬車=凱旋車が登場する Mercury のパジャントである。これらのエピソードに着目することによって、欲望を引き出す"midwife"としての妖精の女王像、Queen Mab speechと暴動・境界侵犯のテーマとの関連性、劇中の祝祭的要素、愛に対して批判的立場をとる Mercutio=Mercury の姿などが浮き彫りにされるはずである。

 

 

分析書誌学の方法

慶応義塾大学助教授 英知明

本発表の目的は、エリザベス朝の戯曲古版本を対象とした分析書誌学の方法の一端を紹介し、この領域が本文研究とどのような関わりを持つかを具体的かつ明示的に示すことである。古版本に記された書誌学上の諸情報だけでなく、ページ上に活字とインクで残された微細な物理的痕跡を辿りながら、印刷工程の一部を合理的に実証し、その背景を推測する。実例として挙げるのは、John Danter 印刷所で1594年に印刷された Thomas Lodge, The Wounds of Civil War である。この作品には少なくとも13冊の古版本が現存しており、これらを精査することから判明する語句の異同、植字工の問題と正しい本文の確定、act-divisions stage directions の特徴が示す印刷原稿 (the copy-text) の性質、title-page に残された意匠から推測される印刷本文への作者関与の可能性等を論じる。


 

セミナー指針

 

セミナー1

イギリス・ルネサンスの文学と出版

コーディネーター:千葉大学助教授 篠崎実

ルネサンス期は、文学作品公表の手段に関して、手稿による流通から印刷本の出版への過渡期として位置づけられる。そうした時期に、印刷本という新しいメディアが詩人・文人たちの活動や作品、さらには文学という制度にたいしてどのような影響をもたらしたかを考えたい。具体的には、Thomas Nortonと法学院劇の出版をめぐる状況(佐藤)、Astrophil and Stellaを中心にSidney作品出版の影響力(篠崎)、Thomas Watson, Thomas Nashe, Christopher Marloweらシドニー・サークル周辺の詩人たちの作品出版に向けた活動(井出)、作者の死後出版されたFulke Grevilleの作品集における削除部分をめぐる謎解き(圓月)などの話題に関するメンバーの発表をもとに討議を進める。ジョンソンやシェイクスピアの全集出版という大きな成果をもたらすルネサンス期の文学作品出版をめぐる状況を鳥瞰的な視野からとらえられれば幸いである。

 

セミナー2

『ロミオとジュリエット』を読む

コーディネーター:那須大学助教授 石塚倫子

 『ロミオとジュリエット』についての特集やアンソロジーは、近年、海外では新しいものがいくつか出ているが、意外にも日本では取り上げられることが少ない。今回のセミナーでは、こうした批評史の間隙を埋める作業も含め、作品の新しい読みを紹介・検討していきたい。
 具体的には、ジェンダーやセクシュアリティをはじめとして、エリザベス時代の「主体」がどのような解釈の可能性をはらんでいるかを検討したい。方法としてはテキストの特定の場面を共通の検討土台としながら、伝統的な悲劇主体から近代主体への発展のプロセス、登場人物たちの欲望と死を巡るジェンダー・ポリティックス、キューピッド表象から見たロミオと男同士の関係、ジュリエットにおけるクイア理論的解釈、さらにバズ・ラーマン監督の映画『ロミオ+ジュリエット』に見られる音楽・映像を絡めた主体構築など、それぞれの守備範囲からさまざまな視座で考えてみたいと思っている。


 

セミナー3

ステュアート朝の仮面劇

コーディネーター:神戸女学院大学教授 山田由美子

濫費を伴う権力誇示の空疎な余興として軽視されていた宮廷仮面劇の本格的な再評価が始まってから四半世紀になる。その間、文学はもとより関係芸術各方面に関わる研究が進められてきたが、舞台装置、音楽、舞踊など、非言語的な部分がどのように関与しているかについては、完全に明らかになっているとはいえない。今回は、総合芸術としての仮面劇の全貌を解明するための試みの一つとして、ベン・ジョンソンからミルトンに至るステュアート朝の仮面劇を取上げ、主として視覚的要因が、仮面劇全般もしくは特定の作品[群]に与える意味合いを再検討していきたい。ささやかな試みではあるが、フロアからの積極的な発言もまじえて、将来この分野の研究を大きく進展させる刺激の場になればと考えている。

 

セミナー4

チャールズ朝の喜劇

コーディネーター:秋田大学助教授 佐々木和貴

このセミナーでは、従来一律に周縁化されてきたチャールズ朝の喜劇群を、近年の批評の成果を踏まえて、あるいは20世紀前半の研究成果を再利用しながら、読み直してみたいと思っています。またこの時期の演劇に光をあてることによって、結果的に、従来の演劇史を暗黙のうちに分断してきた内乱以前/内乱以後という時代区分を一旦括弧に入れることは出来ないだろうかという、より大きな目論見も抱いています。

具体的には、佐々木が導入部分を担当し、末廣氏がJonson、福士氏がShirley、南氏がD'Avenantを軸に論じる予定ですが、もちろん、たとえばNabbesのようないかにもチャールズ朝らしいマイナーな作家にも、話は拡がるでしょう。またセミナー後半部では、現在メンバー間で進行中の「空間表象」「レイク・ヒーローの系譜」「王政復古期演劇との連続性」「政治的読解の是非」などをめぐる議論にも十分な時間をとるつもりです。

この時期の喜劇の多様性と面白さを、メンバーとフロアの共同作業で浮かび上がらせることが出来ればと願っています。


 

1012日(土)         1013日(日)

開会式         9号館9102         特別講演         2号館2102

フォーラム 同上               


 

∞∞∞∞∞ 研究発表 ∞∞∞∞∞

1         9号館9101

2         9号館9103

3         9号館9104

4         9号館9105

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

懇親会     吉祥寺第一ホテル

∞∞∞∞∞ セミナー ∞∞∞∞∞

セミナー1     9号館9101

セミナー2     9号館9102

セミナー3     9号館9103

セミナー4     9号館9104

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

お弁当受け渡し        11号館1階ロビー


 

会員控え室・休憩所 9号館9201

書店展示場 9号館92029203

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

2号館

 

11号館

 
 

 

 

 

 

 

 



 


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